【コラム】ハイメス創成期の回想

執筆者:ハイメス専務理事 藤田道子

※このコラムは2011年にハイメスホームページへ寄稿されました。

ハイメス設立総会に至る1年前、池上恵三、香川千楯、黒川武、佐々木伸浩、高垣幸子、竹津宜男、永井征男、藤田道子の8名が意を共にして「国際文化交流会」の検討委員会を9回もち、仮称ネーミングがICEC(International Cultural Exchange Committee)と決まった頃、はからずも道庁国際交流課と、札幌市国際交流室から、資金援助はできないが道の「姉妹州・省」と札幌市の「姉妹都市」との、民間音楽交流の窓口となって欲しい旨の打診を受けた。

 早速、道の姉妹州との国際交流に対する具体案が欲しいとの要請から、企画・実現したのが’87年6月4日、道立近代美術館ロビーで開催のカナダ・アルバータ州派遣(アルバータ大学芸術学部主任教授)「ヘルムート・ブラウス チャリティ・ピアノコンサート」であった。グランドピアノ(ヤマハ札幌店)、ステージ台9個(アメリカンセンター)、パイプ連結椅子550脚(道立北稜高校)他、多くのボランティア支援を得て、階段も座席となり2階回廊の立ち見も含め総人数615名。コンサート実行委員会の核となったICECは、北海道立近代美術館にローランサンの<名画寄付>の一役も担った。

 コンサートと、翌日の同教授による受講生8名のピアノ公開レッスンの成果を高く評価され、黒川委員の名通訳に感動された当時の堂垣内道知事香千枝夫人の「本気で応援していますよ」との激励に勇気百倍!経済的裏づけのない不安と、8名が爆発せんばかりの熱い音楽への思いを交錯させる中、緊張しながら香千枝夫人を高垣と藤田が訪問。「これからの北海道は人を高める文化こそ必要。ぜひ今のままの姿勢で頑張りなさい、今すぐ道を開く応援者を紹介しましょう」と目の前で北海道電力会社社長の中野友雄氏へ電話をしてくださった。  そこからがドラマのような展開で、次々と18名の各界トップの方々への有難いご紹介を頂戴し、将来へのVision、若手音楽家たちへの道を開く未来像にご賛同をいただくハイメス設立に向かい大きく進展したのである。

 いよいよ1988年8月18日の設立総会に向けて具体的な行動開始が迫られる中、発起人8名は、設立コンセプトへの情熱と組織化への士気を高揚させたものの、社会性、特に経済界の世事に疎くゼロのスタートライン上で足踏み状態。この大事業に立ち向かう姿勢の軟弱さを案じられたのが石黒直文氏(’90~98年 HIMES副理事長、現・私設北海道開拓使の会理事長) で、任意団体設立に関する親身のご指導と言葉に尽くせぬ数々のご配慮をいただき、現在に続く基盤が築かれたのである。そして、早々に理事のご就任を快諾され、多くの賛助会員のご推薦などをいただいた。感謝とともに特筆しておきたい。

 更に、ハイメスの組織化を積極的に応援下さった下記19名の方々、特に参与をお願いした杉岡昭子氏(元・札幌国際プラザ専務理事)の国際視野でのご指導や、今に至る事務局選定のご協力は忘れることができない。まさに北海道各界トップの方々の絶大なお力添えで力強い歩みを始め、今日のハイメスに発展してきたのである。

[ハイメス創立理事会の皆様]
理事長:(札幌医大名誉教授) 河邨文一郎氏、
副理事長:(札響初代指揮者) 荒谷正雄氏 (順不同)
(北海道電力株式会社社長) 中野友雄氏
(株式会社北海道新聞社社長) 渡辺喜久雄氏 (北海道ガス株式会社社長)生島 実氏、
(株式会社北海道銀行頭取)堀 寛氏 (財団法人北方圏センター会長) 東条猛猪氏、
(株式会社拓殖銀行会長)鈴木 茂氏 (株式会社北洋銀行頭取)武井正直氏
(NHK札幌放送局局長) 根津武夫氏 (北海道文化放送株式会社社長) 中川正男氏
(札幌テレビ放送株式会社社長) 伊坂重孝氏 (株式会社丸井今井社長) 今井春雄氏
(北海道国際女性協会会長) 阿部三恵氏 (北海道放送株式会社社長) 富原 薫氏 
(北海道テレビ放送株式会社社長) 畠山 武氏 (株式会社札幌銀行頭取) 潮田 隆氏
(北海道経済同友会常任幹事)石黒直文氏 (千秋庵製菓株式会社社長) 岡部卓司氏

[1988年8月18日]

 設立総会(札幌グランドホテル)は、札幌市長板垣武四氏、ゲスト、理事、監事、顧問、アーチスト会員、計70名で厳粛なスタートであった。(司会:黒川武、発起人挨拶:初代事務局長・永井征男)

 今なお、心に響く「よく我々に相談に来てくれた!支援したい」との嬉しいお言葉、さらに「札響応援の意を込め、正月にオーケストラを聴き、家族とアーチスト会員の身近で親しくディナーできる楽しいイヴェントを考えよう!」との多数のご提言。「今の若者は自由に世界へ飛んで行けるのに留学支援を望むか?」、「我々に甘えっぱなしでなく、自助努力を!」、「何事にも謙虚で」等々。これらは、朝7時からの早朝理事会での貴重なご発言であった。今、中堅・若手アーチスト会員を核とした着実な諸活動の23年を想う時、ハイメスの基礎を築かれた理事の方々が、北海道を愛し、将来を担う若手音楽家たちを信じて、大きなエネルギーを与えて下さったこと、そして、今に引き継がれてご支援を惜しまない各企業様をはじめ、多くの賛助会員の方々の温かいお見守りに、あらためて心底からの謝意を表して回想記としたい。

藤田道子(ふじたみちこ)・・・武蔵野音楽大学声楽科卒、札幌を中心にリサイタルなどで活発な演奏活動。札幌大谷短期大学教授、北海道教育大学特設音楽科非常勤講師を歴任。国立グリンカ音楽院名誉教授。ハイメス専務理事(1988年~2016年)、ハイメス副理事長(2016年~2018年)、ハイメス顧問(2018年~現在)

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