【コラム】札幌の音楽事情とハイメス

執筆者:ハイメス副理事長 竹津宜男

※このコラムは2011年にハイメスホームページへ寄稿されました。

 音楽は人の心に直接訴えて感性を養い、心を豊かにし、他の文化を育み美しい街つくりに大きく寄与します。札幌市はいま「創造都市」を目指しユネスコが2004年に設立した「創造都市ネットワーク」に認定されるよう申請を出す準備をしています。

 「創造都市ネットワーク」とはユネスコが世界でも特色ある都市を認定したもので『グローバル化の進展により固有文化の消失が危惧される中で、文化の多様性を保持するとともに、世界各地の文化産業が潜在的に有している可能性を、都市間の戦略的連携により最大限に発揮させるための枠組みが必要』との観点から2004年に創設したプロジュクトの1つで映画、デザイン、文学、工芸、食文化、クラフトとフォークアート、メディア・アートの7つの分野からなります。参加を希望する都市が申請を出し、認定されたらその都市を世界にアピールすること、認定された都市間や文化団体と交流することが出来ます。日本からは既にデザイン部門で神戸市と名古屋市、工芸部門で金沢市が認定されています。

 札幌の文化は音楽が先導してきました。市民の力で札幌交響楽団を創設したことが原動力となっています。札幌市民が札幌の文化の中心に据えるために作って育ててきたのです。札響の成長と共に札幌の音楽に関連する文化は育ち、様々な部門で世界的に活躍するアーティストを輩出し始めたのです。また、それに呼応するかのように他の分野も成長を遂げてきました。そしてそのことが札幌の都市作りにも反映されて街も徐々に脱皮して美しく文化的になってきました。

 札響が誕生して27年目、1988年8月に2つの音楽団体が札幌に誕生しました。1つは8月18日に誕生した私たちの北海道国際音楽交流協会(ハイメス)です。翌19日には北海道音楽団体協議会が誕生しました。北海道音楽団体協議会は後に「札幌シアター・パーク・プロジェクト」に発展解消されたのですが、札響が成長すると共に演奏会を開催する音楽団体が急速に増えてきたのにコンサートが出来る会場が札幌市民会館、札幌市教育文化会館と北海道厚生年金会館しかなく、演劇や舞踊、邦楽・邦舞などを開催する団体と会場の奪い合いになり、コンサート専用のホールを作りたいと市民運動をする目的で作られたものです。一方、我々のハイメスは札幌で国際音楽祭を開けるような組織を目指して作られました。そして翌年、札幌市は1990年に「国際チューバ・ユーフォニアム札幌大会」を開催する実行委員会を立ち上げ、さらに同じ年にPMFが開催される話が持ち込まれました。ハイメスは全面的に協力する体制をつくりました。

 当時、札幌交響楽団の事務局長を務めていた私のところへ、こういう組織を作りたいと話を持って来られたのは現ハイメス専務理事の藤田道子さんでした。「札幌の姉妹都市には音楽にとどまらずヨーロッパの文化の中心的な役割を果たすドイツのミュンヘンがあり、北海道の姉妹州にはアメリカの文化、特に音楽文化を代表するマサチューセッツ州があるのにもかかわらず、それぞれの役所には音楽交流が出来る窓口がない。私たちの力で交流できる組織を作りたい」と言うお話でした。

 北海道は札響を中心にして優れた音楽家、音楽関係者が育ってきており、私はいずれ国際音楽祭を開催出来たら、と思っていたので、この国際音楽交流の趣旨にはもろ手を挙げて賛成し、ハイメスの旗揚げに参加したわけです。

竹津宜男(たけつ よしお)・・・広島大学教育学部音楽科卒、1961年札幌交響楽団創立メンバー(ホルン奏者)、その後、同団事務局長(1981年)、PMFオペレーティングディレクター(1991年~2005年)を歴任。ハイメス副理事長(2004年~2014年)。

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