【留学レポート】福井遥香さん(第24回ハイメスコンクール<管・弦・打楽器部門>第1位)

 早いもので渡仏から1年が経過しました。
「いつか留学したい」という願いを実現出来たのは、ハイメスコンクールでの優勝及び奨学金の支援によるものが大きく、この場をお借りして改めて関係者の皆様にお礼申し上げます。


 私は現在「エコール・ノルマル音楽院」に通い、クラリネット、室内楽、そして初見演奏の授業を履修しています。クラリネットのクラスでは、世界各国を回りソリスト・室内楽奏者として活躍しているRonald Van Speandonck(ロナウド・ヴァンスパンドッグ)先生に師事し、演奏者視点からの作品の解釈や表現を学んでいます。先生は助言だけでなく実際に演奏も交えたマスタークラスのような形でレッスンを行うので、クラスメイトはお互いのレッスンを聴講し合い刺激を受けながら学ぶことが出来ます。 


 今年の4月にこちらで初めてコンクールに挑戦し、「レオポルド・べラン国際コンクール」クラリネット部門にて名誉賞(一位)を頂くことができました。私自身、課題の残る演奏ではありましたが、演奏後に知らないお客様から「音楽的に素晴らしかった」と笑顔でお言葉を頂いた時に、素直に嬉しく、また自分の成長を感じた瞬間でもありました。 


 今年の8月にはイタリアで行われた二週間の講習会に参加し、教育者として尊敬するクラリネット奏者、Florent HÉAU(フローラン・エオー)先生の下で技術面を中心に学びました。講習会中はコンサートに複数回出演する機会を頂き、イタリアの地で今後に繋がる経験を積むことが出来ました。また、実は約1年半前にも日本の講習会で先生と勉強したことがあり、その際は通訳者がいましたが、今回はフランス語で先生とコミュニケーションをとれたことが大きな喜びでもありました。語学に関しては未だに不自由で苦労していますが、フランス語独特のニュアンスで言葉を理解することは曲を解釈する上でも非常に大切である為、今後も語学面での更なる努力が必要と感じています。


 生活面では、現在アパートをシェアして音楽家の友人と共同生活をしています。渡仏当初は右も左も分からない状態だった為、随分と同居人に助けてもらいました。何か困った時に気軽に話せる相手がいることや、音楽家同士でも練習スタイルや生活リズムの違いなど、一人暮らしでは気が付かない小さな発見や考え方の違いが、私自身を以前よりも柔軟にさせたと思います。
また、学業に支障のない範囲で日本食レストランでアルバイトをして家賃・生活費を稼いでいます。留学しながらのアルバイトは賛否両論ありますが、気持ちさえ強く持てばどんなに忙しくても両立可能です。 

 パリの町並みは大変美しく、一歩外に出れば歴史的建造物があちらこちらに広がり、少し歩くだけでも感性が刺激されます。教会や美術館も沢山あり、芸術を身近に感じる環境で生活できることが幸せでなりません。学生はコンサートの入場料が非常に安いので、世界レベルの演奏を聴けるチャンスが沢山あります。まさに「芸術の都パリ」という表現がぴったりの魅力的な街です。ただ、実際に住んで生活をするとよい面だけではなく、様々な姿が見えるので、日本の便利さや治安の良さ、人間性の違いなど身をもって体感しています。

 この10月より留学生活2年目が始まりました。今年度はエコール・ノルマル音楽院の奨学生として勉強する環境が整い、クラリネット科と室内楽科の高等演奏家ディプロムの取得を目指しています。今年はより積極的に演奏会やコンクールの本番を積み、音楽家としての資質を高め、人に何かを発信できる奏者になれるよう、音楽面・技術面、一人間として一層の努力をしていく覚悟です。
家族をはじめ、支えて下さる全ての皆様にいつか恩返しできる日を目指して、今後も研鑽を積みます。

(2014年10月16日)

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