ハイメス企業インタビューシリーズ Vol.2 北海道新聞社長 村田正敏氏

インタビュー実施 2013年11月6日(水)道新本社ビル

コーディネーター:駒ヶ嶺ゆかり
広報委員:立花雅和 森吉亮江
陪席:西村善信副理事長

駒ヶ嶺ゆかり(以下、駒ヶ嶺):本日は貴重なお時間をありがとうございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。早速ですが、はじめに札響の理事長というお立場から伺わせてください。海外公演を成功させ、積極的な演奏活動を行っている札響ですが、北海道において、どのような存在でありたいとお考えでしょうか。

村田正敏(以下、村田):札響は北海道における音楽活動の大黒柱だと思います。大黒柱には支える柱や屋根があってこそ、立派な音楽の伝統が培われるものと思います。札響が大黒柱だとすれば、それを支える柱の一つがハイメスだろうと思います。
 札響は年間120から130の公演を行い、学校や福祉施設で室内楽のコンサートや楽器の講習会も行っています。大黒柱であると共に、北海道の音楽活動の裾野を広げる役割も果たしています。 現在北海道には179市町村があり、2013年度までに178の市町村での公演をしてきました。残るは後志管内の島牧村です。15年度以降は島牧村でコンサート開催を予定しています。これにより、全ての自治体での公演活動を達成します。これは一つの金字塔になるでしょう。
 またオーケストラとしての水準の向上についても、尾高忠明音楽監督のご指導もあり、全国的にも高い評価を頂いています。‘11年5月「創立50周年」を迎え、ヨーロッパ記念公演を成功させました。同年3月に東日本大震災があり、日本国民は立ち上がる、というメッセージを携えての公演でした。尾高さんの指揮と諏訪内晶子さんのヴァイオリンはヨーロッパ各地でも大変好評で、とりわけ最初のミュンヘン公演では、尾高さんが観客席に向かい「私たち、日本は災害に決して負けない、みんな頑張っている、必ず復興する」とドイツ語で伝えました。そして演奏後には、スタンディングオベーションを頂き、それは大変感動的でした。更に、現地の日本人会が募金を募り、私はその貴重な義援金をお預かりし帰国しました。募金は13年8月、東日本大震災で被災した子供達とそのご家族230人ほどを北海道にお招きした際に役立たせて頂きました。様々な意味で「創立50周年記念公演」は有意義だったと思います。

駒ヶ嶺:有難うございます。札響が北海道に根付く音楽団体として、また世界で高い評価を得た場面を目の当たりにされたその感動が伝わってくるお話でした。ハイメスも北海道の音楽を支える柱のひとつにとのお話ですが、身が引き締まる思いです。
さて次は、北海道新聞社社長のお立場から伺わせてください。芸術文化、数々の主催事業を展開されていますが、文化事業に向けられる思い、道内最大の新聞社として、今後の道内の芸術文化の展望をどのようにとらえていらっしゃいますでしょうか。

村田:私達北海道新聞社、あるいは道新グループは、新聞報道がメインではありますが、事業を通じて地域のパートナーでありたいと願っています。事業局セクションの事業センターでは、文化スポーツ活動を支援しています。1年間の事業は主催共催で800件ほど。その内260件以上が文化的活動です。このほかに、協力、後援の事業が2400件ほどあります。
札響の支援を代表に、文化活動を重視しています。また美術展についても思い切った展開をしています。2008年に札幌の近代美術館で開催した『レオナール・フジタ展』は8万4千人の来館者がありました。藤田さんのご遺族と長い時間をかけ準備し企画運営した事業です。12年の当社の「創立70周年記念事業」の『東山魁夷展』は9万6千人、13年の『シャガール展』は11万8千人と、近代美術館歴代8位となりました。事業センターの担当者の努力により、シャガールの絵と共に、パリ・オペラ座の天井画の原画や、陶芸の展示も叶いました。このように美術展、展覧会の開催も北海道新聞社の責務だと思います。
私自身は、とりわけ子供たちを対象とする事業を大切にしていきたいです。文化スポーツを通しチャンスを得る機会を与えていきたい。たとえばサッカー大会や野球大会で、あるいは書道、絵画大会で入賞したり、入選したりすることで、人生が変わるきっかけになるかもしれないからです。

駒ヶ嶺:二つのお立場から興味深いお話を伺うことができました。私共ハイメスも視野を広く物事をとらえていくべきと気付かされました。
最後にハイメスは、創立当時の渡辺喜久雄元社長時代から北海道新聞社とご縁を頂き大変お世話になっております。現在も変わらずご支援下さることへの想いと、ハイメスの今後に向けてご意見を頂ければ幸いです。
先日、伊藤組社長の伊藤義郎氏のインタビューの中で、札響があり、キタラでは連日コンサートがある札幌だが、“いまひとつ音楽的な行事、斬新なフェスティバルが少ないのでは。”とのご意見を頂きました。そのあたりもどのようなお考えをお持ちでしょうか。

村田:ハイメスの活動には大変敬意を持って見守っております。重要な市民活動をされていると思います。ハイメス創立は1988年とありますが、それ以来北海道新聞社としてのかかわりを持たせて頂いています。創立時は、当時の渡辺社長が支援を約束し、ハイメスの理事に就任しました。2代目の理事長は北海道新聞社出身でUHBの社長だった木梨芳一さんでしたが、ハイメスの活動に熱心に取り組まれたと聞いています。任意団体だったハイメスがNPO法人化を目指し努力されたことは重要な事だったと思います。
また2003年の「創立15周年」の企画で、初代理事長河邨文一郎さんの長編詩をモチーフにした混声合唱付きの交響曲“北の大地”の演奏会も印象深いです。札幌でもう一つ重要な音楽活動は1990年から続いているPMFではないでしょうか。北海道は全国的にみても市民レベルの音楽活動が盛り上がっています。更にこれを広げていく努力を、札響としても、ハイメスとしても、それを支える北海道新聞社としても、続けていくことは間違いないです。
最近ではサッポロシティジャズが根付き始め、大変興味深いです。
ハイメスは、ピアノ、声楽、楽器等若手演奏家を支援されています。すでに第一線で活躍されている音楽家もいらっしゃいます。札響団員にもハイメス出身者がいますね。札響も北海道全体に音楽の種をまいていく作業をしていますが、地方でもそれぞれの地域で音楽活動している人がたくさんいます。
私たちの会社にも、滝川にホルン好きの北海道新聞販売所の経営者がいて、自ら音楽ホールを持ち、日ごと若い人たちとクラシックの音楽活動を展開しています。それぞれの地に根付いた素敵な音楽文化が花開くのは一つの夢です。そのために、札響やハイメスの活動があるのでしょう。これからも手を結び進んでいけば良いと思います。

駒ヶ嶺:ハイメスが一つの枝になれるよう、根を張った活動をと仰って頂いたと受け止めました。北海道全体に視野を広げ、見直してみることにより、札幌自体もよく見えてくることとなると思いました。
ひとつお聴きしたい事があります。村田社長はどんな音楽がお好きでいらっしゃいますか?

村田:私はいろいろ好きですが、クラシックでは特にラヴェルの『ボレロ』が大好きです。忙しくてもコンサートで『ボレロ』が取り上げられれば必ず聴きに行きます。シルヴィ・ギエムという世界的バレエダンサーが『ボレロ』で踊る姿は神々しい。マイカーの中で『ボレロ』を聞くのが好きです。『ボレロ』については、札響と他の交響楽団の違いが分かります。

駒ヶ嶺:『ボレロ』が大変お好きと伺い、これまでのお話がまたグッと迫ってまいりました。

村田:世界中で何万回も演奏されているのでしょうね。札響の『ボレロ』もしっかり演奏できるようになってきたのでしょう。小太鼓も、トロンボーンもクラリネットも緊張するんだろうなあ。大好きですよ。

駒ヶ嶺:今日はお忙しいところいろいろと貴重なお話を伺わせていただき誠に有難うございました。

ハイメスがこれまで歩んでこれた背景には、個人、法人の多大な協賛があってこそである。その間多くのアーティストがハイメスから誕生し、札幌をはじめ道内外で活躍している。創立25周年という節目を迎え、さらにこの活動を継続発展させるには、支援していただいている協賛企業の文化振興に対する思いをもっと理解する必要があるのではないか。その様な思いが原動力となり、この企業インタビューの企画へとつながった。これからのハイメス、ひいては音楽家の将来へ少なからずヒントになることがあれば幸いである。

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