第3回 ハイメス座談会 企画演奏会インタビュー『企画の星』
平成23年3月18日(金) 教育文化会館 研修室

座談会出席者のご紹介

■第2回ハイメスアーティスト企画コンサート 「寺長根ミカ&清水聡子ジョイントコンサート」 
【日時】2011年2月19日(土) 札幌市時計台ホール
【出演】寺長根ミカさん(ピアノ) 清水聡子さん(ピアノ)

■第38回ザ・ルーテルホール・ハイメスコンサート「超絶技巧と詩情」
 〜リスト生誕200年によせて 原曲と編曲の妙技〜
【日時】2011年3月10日(木) ザ・ルーテルホール
【出演】大平まゆみさん(ヴァイオリン) 早坂佳子さん(ソプラノ) 山本真平さん(ピアノ)

(コーディネーター)駒ヶ嶺ゆかり  (広報委員)今野くる美 立花雅和 森吉亮江
(陪席)杉野森事務局員

インタビュー『企画の星』

駒ヶ嶺:本日はお忙しい中お集まり頂き有難うございます。演奏会のご盛会もおめでとうございました。今日はご出演されたお立場で、率直なご意見を頂きたいと思います。どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。早速ご出演のきっかけについて伺わせて頂きましょう。

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寺長根:この企画があることを知っていましたが、清水聡子さんのお誘いを頂き実現に至りました。以前に二人で連弾で出演した事があり、1ヶ月で急遽準備をしたものの私達は意気投合する事が出来ました。その後昨年3月にもザ・ルーテルホール・ハイメスコンサートでチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を共演し、今回は喜んで応募しました。

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清水:その昨年3月の演奏会後、一人もしくは二人の演奏会を企画したい気持を持っておりましたが、なかなか踏み出せずにいました。しかしこの企画の事を知り応募したいと思いました。企画書を作成しながら、演奏曲目への夢がどんどん膨らみました。ハイメスからお返事を頂き、気が引き締まる思いで準備してきました。時計台という場所がらも良く、救急車も通りましたがお客様が大変楽しんでくれました。

駒ヶ嶺:寺長根さんと清水さんはハイメスがサポートする企画演奏会へご応募下さり、自主企画演奏会への第1歩を踏み出されたのですね。ありがとうございました。さて次はハイメスがテーマを掲げた演奏会へご出演頂いた皆様にお話を伺いましょう。

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山本:最初この企画の内容を知った時、「素晴らしい、是非聴きたい」という気持になりました。"超絶技巧"からは、早いパッセージを達者に演奏するイメージがすぐに浮かびますが、実はそれだけではない事を僕は今回演奏したリストの作品から発見しました。ピアノのヴィルトゥオーゾとは、色々な音色で演奏できてこそと、新たな発見もあり、大変挑戦しがいがありました。

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早坂:私はこの演奏会の企画委員の一人でもあり、はじめ自分が演奏する予定は全くなく、会議ではリストのピアノ作品の原曲になっているシューベルトやシューマン、そしてリスト自身の歌曲作品を挙げました。その後、私が演奏する事になり、苦労しながらも演奏に挑む事となりました。ピアノ作品としてのイメージが強かった「愛の夢」では、出来るだけ楽譜に基づき、シンプルに歌い上げたいと思い演奏いたしました。

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大平:これまでの多くのリサイタルや、昨年札響とコンチェルトを演奏した時の反省から、ここで自分の技術をさらに上げたいと思っていた時だったので、出演依頼を受けました。パガニーニのラ・カンパネッラは難曲ですが、楽器の持ち方から研究し直し、大変勉強になりました。今後私のレパートリーになればと思います。企画はブラボーです!様々な出演者と一つのテーマ性をもったプログラムは素晴らしいと思いました。お客様も楽しまれたと思います。

駒ヶ嶺:テーマによって新しい道が開けることもありますね。では、演奏されたご感想をお願いします。

大平:曲によっては会場が狭かったというお客様の声を聞きました。響きを活かす空間があったらよかったのではと思いました。

山本:一般的に知られている曲を窓口にして、原曲、編曲の対比紹介ができたことがよかったと思います。今後もリストに関しては、ロッシーニの歌曲、宗教的な作品をテーマにしてシリーズを継続してもよいのではないかと思いました。

清水:企画演奏会は、非常に体力的に厳しいプログラムになってしまって、直前は本当につらくなり、経験の浅さを感じました。トークや衣装にはこだわってみました。

早坂:例えば私はドイツリートを勉強しています。自分でたくさん勉強したものをリサイタルなどに並べがちですが、演奏者自身や専門家のお話を入れながらだとお客様が楽しめるのではないかと思いました。

駒ヶ嶺:お話は演奏の一部だと考えてよいのではないでしょうか。

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大平:何のために演奏しているのかしっかり考えることが大切だと思います。自分達の満足のため、あるいはここまで勉強しました、という演奏会が結構あります。しかし、一般のお客様が望むものは、音楽を楽しむことだということを忘れてはいけません。テクニックがすごいだけでは感動は伝わらない、それ以上の大切なものを伝えることが音楽家の責任だと思います。

駒ヶ嶺:これは企画問わず演奏すること全てに言えることでしょうね。演奏した音楽が人々と何を共有し、共鳴していけることが尊いと思います。音楽に携わる者として考えるべきであると思います。

寺長根:そうですね。何かを発信する演奏会でなければいけないと強く思います。企画も演奏も自己満足になってしまうのではなく、どれだけ心を込められるかが大事だと思います。

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山本:自分も今の話に共感しました。僕は作品を知ってもらう事を目標にしています。毎月夕張でコンサートを企画しており、毎回テーマを考えピアノ演奏と共に一曲一曲解説をします。お客様から、「分かって聞くと本当に楽しい。」と言って頂いてます。例えば、絵画を鑑賞する時、予備知識がなく絵を見るより、作家の意図を知ってからだと色々な見方が出来ると思います。音楽も同じかなと。僕の中で一番大事なのは分かって聴いて頂くということです。それは作品を前に出し、お客様と作品の間に自分がいるといったスタンスなのかなと思っています。

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駒ヶ嶺;山本さんのように親切な内容で、音楽の道筋をつける演奏会も大切でしょう。また有名な作品でも知らずに出会う時もあるでしょう。その時、感情を揺り動かされる事こそ、喜びだけにとどまらないとても大切な事だと思います。一生懸命に企画され、音楽の素晴らしさを伝えたいと願う心のこもった演奏会は絶対人の心に残るでしょう。しかし決しておごりではなく、音楽そのものだけを感じて下さい、という演奏会がその対極にあっても良いと思います。さて時間も差し迫って参りました。この度の座談会では大変貴重なご意見を沢山伺う事が出来嬉しい限りです。最後にハイメスへの要望、また今後のプランなどお話しください。

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寺長根:3月11日以来、この一週間で世の中に色々な事が起こってしまいました。私のピアノで役にたてることがあるならこれほど嬉しく、ありがたい事はないと思い、ボランティア演奏をお引き受けしました。これからも何かを発信し、祈りを込めて演奏していきたいのが今の気持ちです。ハイメスに対しては、今回のコンサートで、プログラミング、事務的なこと、チラシ入れの大変な作業まで全てやって頂き、私達は安心し心強く演奏会に臨む事が出来ました。大変感謝しております。

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清水:私は今までコンサートに何度か出演させて頂きましたが、裏方がどのように動いていたのかを知らなかったです。皆さんの御苦労が分かり、ハイメスではチラシ作成から当日のお手伝いもして頂き、二人だけでやったとはとても言えません。演奏会を作っていく事が分かってきたので、今日の皆さんのお話も聞いて、私も病院等で積極的に演奏し、子供さん達にも喜んでもらえるよう、難しい曲ばかりではなく、曲の解説を交えながら、幅広い方々に聴いて頂ける演奏をしていきたいと思います。今回のコンサートがきっかけとなりこれからも拡げていけるのではないかと思います。

駒ヶ嶺:演奏会の成り立ちを知ることは大切ですね。自分達が全てをやりながら演奏をする事は不可能です。だからこそ支えて下さる方への配慮や、仕組みを理解した上で分業化し、演奏に集中させて頂くと言う事ですね。ぜひ希望を持って頑張ってください。

山本:僕はこの度の震災で何かできる事はないかと思っています。このような小さな気持ちも繋がれば何か形になると思います。ハイメスと言う組織こそ、普段からから繋がれるのではないでしょうか。例えばコンサートに向け、テーマに関して勉強会を開いたり、普段からもっと繋がれないのかなと思いました。

駒ヶ嶺:HPでは、ハイメス主催、会員主催の演奏会をご紹介しております。しかし交流の場面は確かに少ないですね。コミュニケーションが取れる場面として、演奏会のみならず、ご提案の勉強会、または各委員会を通じて交流を深めて参りたいものです。期待しています。

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早坂:私は十年ほどハイメスにお世話になっています。現在はコンサート委員ですが、ドイツから帰国した直後から、沢山のコンサートに出演させて頂き大変勉強になりました。自分もまだまだと思う事ばかりですが、今一番気になるのが、若い人達の勉強する機会が少ない事と、縦横の繋がりが稀薄になっていることへの心配です。若い人達を勉強会等でサポートしてあげたい、アンサンブルの機会も増やしてどんどん声を掛け、繋がりを持てるようにしてあげたいと思っています。

駒ヶ嶺:企画を通して交流を望まれると言う事ですね。狭い札幌で音楽家も沢山いらっしゃいます。若い方も、中堅と言われる方、ベテランも、皆さんそれぞれに必死だと思います。早坂さんは若い皆さんに対し、少しでも還元していきたいお気持ちをお持ちですね。若い人は先輩達の姿から教えを得る事もあろうかと思いますが、ハイメスの交流を有効に、積極的に考えていくべきでしょう。ありがとうございました。

大平:ハイメスの中で、もっと横の繋がりがあると良いですね。今回のコンサートではハイメスの先輩達が舞台の運営に携わってくださったのですが、私たちはそれを見ていろいろなことを学ばなければいけないと思います。特にピアニストは楽器の性格上一人の演奏会が多くて孤独だと思うのですが、このような場で先輩方の話を聞く機会があると励みになりますね。

駒ヶ嶺:今回の座談会は、皆さんの本音が語られとても有意義でした。これらのご意見を反映させて参りたいです。更にそれぞれの委員会でも念頭に置きながら進めていきたいです。貴重なご意見、本当にありがとうございました。では広報委員の皆さんからもご感想を頂きましょう。

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森吉:日頃感じていることを率直にお話いただき、また、コーディネーターの絶妙な進行により、とても良い座談会だったと思います。私もとても勉強になりました。これからも会員の皆様のご協力をいただきながら、広報委員会として様々な情報を発信していけるように努めて参りたいと思いました。

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今野:今日は皆さんの率直な意見を聞かせてくださり、本当にありがとうございました。あるピアニストは演奏家のあり方として、演奏家としての自分、作曲家としての自分、それから観客としての自分を持たなければならないと言っていましたが、今日の話を聞いてその通りだと、私自身も考えていかなければならないと思いました。チラシの内容も、もう少しテーマを掘り下げた内容を載せたりなどの工夫をしてあげると良いと感じました。

立花:横の繋がりをもとうとした事がきっかけで、座談会が始まり、ホームページが立ち上がりました。横の繋がりは音楽界全体の活性化にも繋がるので、ハイメスとしても、広報委員としてもさらに活動を進めていきたいと思います。3月に起きた震災にも関わることですが、自粛という思考停止に陥るのではなく、今聴衆はどこで、どのような音楽を求めているのかを、あらゆる手段を使って知らなければならないと思います。

駒ヶ嶺:今回の震災について、ベルリン・フィルからも素晴らしいメッセージが届いていましたね。私自身、広報委員として、演奏家として、「演奏」そのものに向き合ったお話を伺うことができ、本当に貴重な時間でした。音楽家としてはもちろん、人間としても成長していきたいとつくづく思います。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。



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