第1回 ハイメス留学劇場
平成21年10月27日(火) 札幌市民ホール2階 第6会議室

(体験者) 後藤ちしを 立花雅和 二田浩衣  (体験者・広報委員) 石田敏明 森吉亮江
(コーディネーター)駒ヶ嶺ゆかり  (陪席) 藤田専務理事 西村事務局長

第2話 【そして、留学生活】



第二話では、実際の留学生活のお話を伺います。
生活費のこと、ビザの申請、また学生としての立場、音楽会の状況などなど、
国によって様々な違いが見えてきます。



司会(駒ヶ嶺):次に、少々具体的な事として費用に関するお話を伺わせて下さい。差し支えない範囲でお願いします。たとえばビザ取得時に国によって違いがあると思いますが、事前に銀行に振り込まなければならないとか、特徴的なお話があれば。また助成金にまつわるお話などお願いします。また実生活の物価に関する事として、コーヒー一杯の値段など教えて頂ければと思います。演奏会のチケット代、学生の立場ではどのように入場できた等、その辺に触れて頂きたいと思います。それでは立花さんから。

立花:ビザ取得に必要なものというのは、滞在許可証を最初に申請する時にたしか残高証明書が必要になります。それは、今いくらになっているか分からないけれど、僕のときは最低でも40万円だったかな。

司会:大凡、一年分の生活費くらいとかでしょうか。

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二田:100万円くらいでは?

森吉:1年間の総経費分、だったような…。

後藤:50万円くらいでなかったかな。

司会:皆さんのそれはEUになってからですか?EU以前と以後ではかなり違うと思いますが…。

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立花:滞在許可証を得るのがなかなか大変と聞いていたので、必要な書類はしっかり用意していきました。やはり、滞在許可の申請を終えるまでは大変だった。まず最初に、役所に行くための予約をとらなくてはいけない。これをビザが消える3か月の間に終えなくてはいけない。実際、僕はオーバーしていまいました。多分2か月くらい不法滞在で。最終的に半年くらいかかった。ひとつでも書類の不備があったらダメ、作り直してまたと。ぼくがいった次かその次の年から、ようやくインターネットの予約が始まって。それまでは予約を取るのに朝5時から行列し、予約をとっても役所の窓口にたどり着くまでずらっと行列で。今では、多少改善されたらしいけど。

二田:私の時はインターネットで予約できましたが、受け取りに行った時は4時間も待たされて、ようやく自分の番が来たと思ったら、まだ出来てないので、来月また来て下さい、とか。

立花:覚悟はして行ったのですが、本当に大変でした。

司会:フランスでの話でしたが、後藤さん、イタリアはどうでしたか?

後藤:イタリアも大変です。滞在許可証は一年ごとの更新なのだけれど、書類が揃わないとすぐ返されて、来月また来てくださいとなる。費用に関しては、先ず日本でビザを取るときに通帳の残高を示したと思います。あとは向こうへ行ってからの滞在許可の更新の時もやはり、残高証明が必要でした。それも、ユーロなので毎年毎年上がって行く。日本円で大体60~70万円くらいの貯蓄は必要でした。ウィーンの方では、期間が短かったので更新の経験がなく詳しくないのですが。

司会:コーヒー一杯のお値段は?

立花:コーヒーは安いですね。普通、コーヒーというとエスプレッソが出てくる。普通のカフェで1ユーロ強、130円強、ま、2ユーロいくときもあるけど。

司会:コーヒーといえばフランスはエスプレッソなのですね。やはりイタリアも、ですか?

後藤:そう、コーヒーはカフェといってエスプレッソがでてくる。日本ではいろんな種類のコーヒーだけれど、イタリアではエスプレッソのこと。やはり1ユーロくらい。

二田:私の時はフランスで300円くらいかな。安くて2ユーロくらい。

司会:ベルギーは?

森吉:5ユーロくらいになっていたかな。

石田:渡独したときは、まだドイツマルクの時代でした。コーヒーは3.5〜4マルク、250~300円というところ。EUになってからは2.2くらい、チップが必要なカフェでは3ユーロくらいでした。

司会:EUになって便乗値上げがあったのでしょうね。

立花:マクドナルドでセットを頼むと普通で6ユーロくらい、ビッグマックを頼むと確か6.9ユーロ。850円でした。

二田:ノルウェーは1,200円もしました。

司会:ヘルシンキもそう、マクドナルドは大変なぜいたく品。北欧はメチャクチャ高いけど、ノルウェーのベルゲンは特に高いでしょう。では、次に演奏会、オペラとかについて伺いたいと思います。後藤さんからお願いします。

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後藤:ウィーンのシュターツオーパーの立見席。たくさんの席はありませんが、一番高くて3ユーロでした。もっと安い席が2ユーロくらい。全部立ち見ですが。マフラーを巻きつけて陣地とりをするわけです。何時間も前から待つ、それが毎日毎日の光景。ミラノのスカラ座のガレリア立見席は、オペラが12ユーロから、バレエやコンサート、リサイタルの場合だと、同じく立ち見で5ユーロからです。ジャンルにもよりますが、いわゆるサロンコンサートで15〜20ユーロ位から、約2,000〜2,500円位からでしょうか。とくに学生値段の記憶はありませんが、無料のコンサートも結構多くあります。

司会:ベルリンはいかがでしたか?

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石田:オペラハウスは旧西側にひとつ、旧東側に二つ、3つあります。値段は立ち見で6から8ユーロくらい。空席があれば当日割引もあります。演奏会のチケットに関しては、学生割引はあるものとないものがあります。ベルリンフィルの場合、割引制度はないですが、インターネットで事前に申し込むとリハーサルを聴くことが出来ます。立見席では1,600~1,800円くらい。活発な演奏活動を聴く機会が多く恵まれてはいましたが、経済状態の悪化はベルリンも同じで、8つあるプロのオーケストラのうち、残念ながら一つは廃止となりました。オペラハウスも3つもいらないとか、助成を減らすべきだとか活発な議論がされているのをよく耳にしました。

司会:ブリュッセルではどうでしょうか?

森吉:学生証を見せると、演奏会は基本的に半額以下でチケットが買えました。10ユーロくらいからかな。音楽院大ホールでのコンサートでは音楽院の学生は無料でした。但し、一般のお客さんが入るのを待った後、ダッシュで空席を探すという形でしたけれど。

司会:只今、学生ならではの特権のお話でしたが、音楽に限らず他の場面でも、これは得しちゃったかな、また逆だった事について。また、国によって事情が違うと感じた事等ありましたら。二田さんいかがですか?

二田:フランスでは、イマジネールという交通費の学生割引があり非常に安かったです。あとルーブル美術館では26歳未満は水金の6時以降は無料で入れるというのもありました。

石田:年齢制限はドイツにもあります。26歳以上は学生割引が受けられないものがあり、30歳を超えると、学生でも保険料が倍に跳ね上がるとか…。年を重ねると、学生の恩恵を受けにくくなります。

立花:札幌のスイカやキタカのようにICカードをかざすだけのサービス、あれの学生券があって、イマジネールというのですが、それでパリ市内どこでも行けました。バスも地下鉄も乗れる。向こうの料金形態は街の中心からドーナツ形に決まっていて、1ゾーンと2ゾーンがパリ市内、3,4ゾーンと広がっていく。普通の日は1,2ゾーンだが、週末はすべて適用という仕組み。交通機関とは一年契約する。たしか、一ヶ月あたり35ユーロくらいだったと思います。年間分ポンと払った記憶がある。あと、学生の一人暮らしを支援するアロカシオンという制度があって、それを申請すれば、留学生でも家賃の何割かを負担してくれるというものです。

司会:他の国にはなかったでしょうか?学生であれば家賃の何割かを負担してくれるというものなど。フィンランドにはありましたが。

後藤:学校の中で情報は得られます。学校の掲示板でも知りましたが、学生を支援するホームステイなどがあり、予算に応じた細やかな対応をしてくれて予算の範囲内で探してくれたりもします。

司会:生活費は一月あたりどのくらいの経費が掛かったでしょうか。立花さんはいかがでしたか?

立花:大体、家賃としては、音楽が出来るところだと最低600ユーロかな。500ユーロで探しても、まずありませんでした。僕が住んでいたのはオール電化でガスがありませんでした。食べるものは外食をしなければ安いです。消費税率が品物により異なり、食品等の生活必需品は税率が低くて、それ以外は20パーセント近いです。

司会:ヨーロッパは日本のように、何時でも何でも売っていないですね。土日祝日は一斉に休んでしまいますし。

立花:そういう時使ったのがアラブ系の人がやっている店。休日や、割りと夜遅くでもやっていて、重宝しました。僕らはアラブ屋と称していましたが。

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森吉:ブリュッセルの音楽院には寮も奨学金制度もなく、学生支援制度もホームステイの支援も無かったです。ただし、学校の掲示板にて物件や楽器売買情報等の学生同士の情報交換は有りました。学校は週末閉まるので、ベルギー人の学生のように週末に実家に帰れない留学生達は、楽器を家に所有するか、楽器店の練習室を有料レンタルしなければ練習できません。また、音出しが出来る物件は限られていて、私のようにピアノ学生が借りていた部屋に入れたことはラッキーでした。一般的にピアノレンタルはグランドのC3くらいで、当時、月5,000~6,000円だったと思います。(安いという声あり)私はベルギーフランとユーロの時代をまたいでいますが、入学当初の学費は年6万円程度でした。

司会:学費が掛かる国と掛からない国があるということですね。

森吉:でも、卒業する頃にはEU加盟国民以外の学生の学費は予告無しにユーロ計算で約13倍に。さらにレートの変化が拍車をかけ、その年からEU外の学生はガタッと減ってしまいました。

司会:有り難うございました。実際に留学された方からでなければ伺えない貴重なお話ばかりでした。


いかがでしたでしょうか?
ビザ申請の苦労や、学費のこと、事前に知っておけば、それなりと対処もありそうですね。
実際の苦労話をこのように伺い、これから留学される方の参考にして頂きたいものです。


⇒ 第3話 【ついに帰国】 に続く